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日々雑考 問題なき所に美術家無し
2012年12月24日
 
 美術家にとって、何かに対する飢えとか渇望感、俗にいうハングリー精神というのがとても重要だと思う。一流の美術品を見たときに心にドンとくる強さとは、そういう人間の渇望する気持ちと、時代と、環境とが擦れあったときに出る火花みたいなものじゃないかと思う。その火花は作品の中に炎のように燃え続ける。生身の人間が望んでも決して達成し得ない永遠の命が、人造物に宿る瞬間だ。一流の美術家になるひとというのは、表現に対する根源的な渇望感を持っているうえ、人生において持続的に葛藤していくことに耐えうる心の強さも持ち合わせている人間だと思う。(心の強さ・・・ていうのはちょっと違うかな。じゃあ「生まれながらの葛藤好き」とでもしておきたい。)話をもとにどすと、紛争地帯、政情の不安定な場所、特別な環境からやってきた人というのは、そういう意味で常に価値がある。誰にも知りえない苦悩や葛藤を味わえば味わうほど、それを表現していく事への意味合いが深まるからだ。身の回りに葛藤をもよおさせる出来事(多くは災い)が無い場合、今度は問題を探し出す能力や、さらには問題を造る(提起する)能力が重要になる。

 年齢も大事だ。10代や20代という年頃の人々は、自然と何かを渇望していることが多い。この時期、やることの方向性はどうであれ、みんな自分の中にあるなにか確固としたものを証明して、社会の中での自らの立ち位置を確認したいという欲求を抱える。若者はそれだけで可能性の象徴のような存在だと思うのは、自分がだんだん年をとってきているためだろうか。大切にしたいものを手に持てば持つほど身動きはとりにくくなってくることは、世の中の物理的な掟だ。

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 ここで自分として気になるのは、じゃあ、現代の日本に生まれた人間が、特にコンテンポラリーアート、現代芸術の分野で優れた美術家になるためには、どうしたらいいんだろ?と考えてみた。まず、日本という国は総合的にみて、案外問題の少ない国だというのを認識することが大事だと思う。これは、アーティストにとっては厳しい環境だ。人々の多くはこの国におぎゃあと生まれたその日から、世の中においてはいわゆる勝ち組であると思う。そこを忘れて、例えば「人間の苦悩」みたいのを押し出したとしても、ともすると説得力に欠けてしまいやすいというか、もっとほかの場所からより深度のある苦悩を経験した人たちの前ではちょっと力負けする。これは自分自身がよく陥いる落とし穴でもある。日本人の苦悩も、問題も、相対的目線から見ると、はっきりいってたいした事無いものが多い。誤解しないで欲しいのは、日本の人々がチンケなことで悩み苦しんでいるという意味ではない。今話題にしているのは、その深度だ。日本に限らず「先進諸国」に住んでいる美術家は、制作の題材を決定する前に、ほんとにその題材が重要で、主にどんな人々とってどのような意味や価値のあるものなのか、じっくり考える必要があるように思う。

 これらを踏まえたうえで効果的と思われるふたつの方法について考えてみた。ひとつめは、先にも書いたように「問題を見つける能力」を研ぎ澄ましていくか、あるいは「問題を作り出す能力」を鍛えること。前者は思考と感受性のトレーニングで、後者は豊富な創造性、というかでっちあげの能力が重要になると思う。現在日本に居て現代美術に携わっている人の多くは、ここに当てはまる。人間世界における「問題」というのはおもしろい生き物で、減少はすれど全く完全に無くなる事はないのだ。だから論理上は、アーティストがこの立ち位置を守る限り、作品を作る糸口はいくらでもあるということになる。ふたつめは単純に、自らもっと問題の多そうな場所に介入していくことだ。例えば「日本人である」という枠から一歩あゆみを進めて、自分を「世界の人」であるとして考えてみること、そしたら、世界の様々な問題は手の中ということになる。これは見返りも大きいけど、危険と隣りあわせの手段でもある。なぜなら一たび「世界」に入ってしまえば、この世の課題や問題があまりに多岐にわたり、かつ煩雑に入り組んでいることに直面する可能性があるからだ。芸術・美術的アプローチが果たして効果的なのか自体が疑わしく思えてくる事もままあると思う。激しい葛藤が訪れるだろう。そして、その葛藤はより良い表現をするための糧となるかもしれないし、美術家を自壊させるものになるかもしれないのだ。
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